台湾の立法委員がビットコインを外貨準備資産に加えることを提案、経済安全保障の強化を目指す
2025年5月9日、台湾の立法委員・柯志恩(Ko Ju-Chun)氏は、国家の外貨準備資産にビットコイン(BTC)を組み入れることを政府に提案した。金や外貨と並んでビットコインを保有することで、地政学的リスクや世界的な経済不確実性に対するヘッジ(リスク分散)手段になると主張している。
同氏は国家財政会議での発言の中で、ビットコインの非中央集権的な性質、供給量の制限、そして国際的に価値保存資産として注目されている点を挙げ、台湾の主権資産戦略においてもその活用を検討すべきだと強調した。台湾は輸出依存が高く、新台湾ドルの為替変動リスクに常に直面していることから、準備資産の多様化は不可欠だと述べた。
さらに柯氏は、万一の危機時における資産凍結のリスクを避け、流動性を確保できる「相関性の低い」資産として、ビットコインの潜在力に注目。以前、SNS「X」で台湾の外貨準備の最大5%(約500億ドル)をビットコインに振り分ける可能性にも言及しており、これは全面的な移行ではなく、分散戦略の一環であると説明している。
台湾では現在、暗号資産に対する規制強化と市場整備が進行中だ。金融監督管理委員会(FSC)は、年内にも機関投資家向けの暗号資産カストディ(保管)試験運用を開始予定。一方で中国本土は暗号資産関連活動の全面禁止を継続しており、台湾の柔軟な姿勢が際立っている。
FSCは2025年3月25日に「バーチャル資産サービス法(仮称)」の草案を発表し、仮想通貨業者へのライセンス制度、ステーブルコイン発行の銀行規制、投資家保護措置などを盛り込んだ。現在、60日間のパブリックコメント期間を設けており、6月末までに行政院への提出を予定している。
柯志恩氏の提案は、国家戦略資産としてビットコインを検討する国・地域の中でも先進的な動きの一つといえる。現時点では正式な政策として採用されてはいないが、台湾の金融政策におけるデジタル資産の重要性が高まりつつあることを示している。
この動きは、台湾が今後国際的な金融環境において、より強靭かつ柔軟な経済体制を築こうとしている一環ともいえる。ビットコインの導入が実現すれば、アジア太平洋地域における暗号資産の制度的受容においても先駆的な事例となるだろう。